オールローズギター、
今日からボディ製作の様子をご紹介です。
ご存知の方も多いと思いますが、
今年はこのローズウッドを取り巻く環境が激変してしまった年になりました。
これまではブラジリアンローズウッドをはじめ、数種に限定されていたワシントン条約の規制が、
ローズウッドが属するマメ科ツルサイカチ属の樹木全体を対象としたものに変更されました。
つまり今後は、ローズウッド全種の輸出入に制限がある状態ということになります。
規制にはレベルがあり、多くのローズウッドが付属書3類ということですので、
速やかに取引が禁止されるものではありませんが、
ローズウッドの流通が今後激減することは間違いありません。
そんな中で頂いた今回のお話でしたので、
今回はただローズウッドでギターを作る、と言うだけでなく、
ローズウッドという木材自体を堪能していただけるよう、いろいろ試行錯誤しながら進めさせていただきました。
というわけで、ボディ製作の最初は、
花形であるトップ材の製材から取り掛かります。
インディアンローズウッドは比較的素直な木目の材で、変わり杢目が出てくることは余りません。
ところが今回頂いた大盤の中で1か所あったのです。何ともお上品に木目が揺らいでいる部分が。
そういった部分は木の中でも不安定な部分であることが多く、
やはり近くには大きな割れや入り皮があったのですが、
今回設計していたギターのボディパターンであれば、なんとかギリギリトップ材が切り出せそうです。
というわけで、バンドソーに直線挽き用の刃を取り付け、慎重に薄板を切り出します。
いつものメイプルとは訳が違う硬さですので、
あせらずゆっくりと進めます。
必要な厚み2枚を切り出したら、
ドラムサンダーという、中で紙やすりがグルグル回っている機械で表面を整え、
出来ました。
フィギュアドのインディアンローズのブックマッチ材です。
この段階で木材の表面には大きなヤスリ傷がついている状態。
それでもこれだけ杢が見えるということは・・・
磨き上げ、塗装したときのことを想像すると、ニヤケが止まりません。
続いて、バック材の準備です。
おいしそうなトップ材と違って、なんとも淡泊な木目ですが、
むしろこれぞインドローズと言った趣です。
ネック、トップ材と切り出した残りの部分から、
色味が綺麗な部位を選んでカットしました。
目方に乗せてみると、5.7kg!
一般的なエレキ材だと、
スワンプアッシュで3kg台~4kg前半、
アルダーで4kgくらいですから、
さすがに重いぞインドローズ。
このままソリッドで作ると、
筋トレギターみたいなものが出来上がってしまいますので、
軽量化必須です。
ということで、ハンディルーターで豪快に抜いていきます。
硬いので、時間がかかります。
耳栓も必須の作業です。
作業後はお風呂場直行です。
こうして4つの穴を空けました。
約700g程軽量化できました。
穴のサイズは勘で決めましたが、目標通り過ぎてビックリ。
見にくいかもしれませんが、透明なボディ型をあててみたのが右側。
ボディに対してこんな感じで穴を空けました。
今回はセミホロウ感を出したい訳ではなく、
あくまでも軽量化が目的ですので、
出来るだけ穴の位置もパーツから遠ざけ、
箱なり感が出ないよう小分けにしてみました。
この後トップ材で蓋をしてしまいますので、
ボール盤で沢山穴を空けるだけでも軽量化は出来るのですが、
この辺の形状もカッコ良く無いと私は嫌なんです。
こうしてボディの素材が揃いましたので、
接着をします。
トップ材とバック材の間には、メイプルの薄板を挟みます。
こういった薄板を挟む手法は、
元々は接着力を高めるためのものらしいのですが、
メイプルの白いラインがギターの中で良いアクセントになりますので、
私はローズウッドのギターに限らずよくやります。
どういう見た目に仕上がるかは、また次回ご紹介をさせていただきます。
50年近く保管されていた木材を切り出し加工をしていくこの作業。
切ってみたら穴だらけとか、
切ったら反りや割れが出てしまったとか、
そういった可能性も十分に考えられましたので、
ここまでの作業が順調に行った段階で、
心底ホッとしたわけであります。
ローズウッドの神様ありがとう。
残すは普通のギター製作作業。
俄然勢いを増して、完成まで突き進みます。