今日はちょっと長くなりそうなので、
冒頭は短めに。
先週作業させていただいたフレット交換のご依頼、
こんな仕上げ方をしました。
フレットのエッジ(両端)に注目です。
球状に光り輝いているのがご覧いただけますでしょうか?
これは「ボールエッジ」と呼ばれるフレットの仕上げ方で、
一部のハイエンドメーカーさんが採用しています。
1本1本削り出していきますので、とてもとても手間がかかります。
(今回はステンレスフレットでしたので、そりゃぁもう・・・)
この仕上げ、1番のメリットは演奏性の良さなのですが、
実はここまで丸めなくても演奏上問題が無い場合がほとんどだったりしますので、
そうなってくると「見た目の高級感」が一番の売りなのかもしれません。
この仕上げはとても手間がかかりますので、当工房でもオプション扱いなのですが、
特にご指定が無い時は私はこのように仕上げています。
フレットのサイドはある程度に斜めに加工して、
角を丁寧に面取りし、
傷を細かくしてから鏡面に仕上げます。
この写真の個体で角度は50°くらいでしょうか。
今度は違う個体、
仕上げ方は同じですが、大分見た目が変わります。
先ほどのフレットに比べると、
大分大きいフレットで、特に高さが高いですね。
寸法的には0.4mm程高さがあります。
フレットの高さが高くなると、
フレットサイドを斜めにした時に、
フレット頂点の実効長(弦が乗る部分の長さ)が短くなってしまいますので、
このギターではサイドの角度を60°程度にしか斜めにしていません。
特にこのギターはストラトキャスターで、
ビンテージタイプのブリッジが載っていましたので、
1弦や6弦はネックの端ギリギリを通る設計。
フレットのサイドを斜めにし過ぎると、
弦落ちし易くなってしまいますので、加工中はかなり注意が必要です。
角度を立てて削ると、その分演奏中指に引っかかりやすくなりますから、
面取りはいつもより少し大きめに行いました。
でも面取りしすぎるとまた弦落ちし易くなってしまいますので、
注意が必要です・・・・・。
この個体はギリギリ大丈夫でしたが、
ストラトは、高さのあるフレットを使いにくかったりします。
次もなかなか苦労した個体。
これはフレットサイドの角度が
45°に満たないと思います。
かなり寝かせて削る必要がありました。
理由は、指板サイドが凄く丸められていたこと。
このフレットサイドの角度というのは、
ただフレットのことだけ考えて削れば良いのではなく、
あくまでもネックの一部ですから、
グリップ側と滑らかにつながる必要があります。
このベースはグリップ側の形状に繋がるようにフレットを削ると、
ここまで寝かせる必要があったというわけです。
なんだかマニアックな解説を続けてきましたが、
つまりフレットサイドの角度というのは、
- フレットの高さ
- ネックの形
- そのギターの弦ピッチ
- ご依頼主の好み
これらを総合して判断しなければなりません。
最初にご紹介したボールエッジ、
ボール状に丸める為には、
フレットサイドの角度はかなり立てて削り、
そこから大きく面取りしていく作業となります。
そのためには、指板サイドの形も元から立ち気味の形状である必要がありますし、
弦ピッチにも弦落ちしにくい余裕が必要です。
そのため、意外とすんなり採用出来るモデルは少ないのですが、
高級ギターの代名詞みたいなイメージもあってか、
ご希望になるお客様は少なくありません。
今回のギターは元がボールエッジでしたので、
お客様もそれをご希望になり、
私も問題無く作業させていただきました。
ただ基本的には、
そのギターにあったフレットの形というものがあり、
しっかりと判断して作業させていただいておりますので、
安心してお任せ下さい。