ブログの更新が、
週1回位で落ち着いて来てしまってます。
もう少しペースを上げたいと思っている今日この頃。
再来週11月4日~6日は
楽器業界2年に1回のお祭り、楽器フェアがありますね。
私も4日、5日あたりで会場をフラフラしている予定です。
見かけた方、是非お声かけください。
当工房が絡む出展もございますが、
詳細はまた後日。
今日ご紹介するのは、
なかなか難しかった、
ビンテージベースのフレット交換。
75年製のFender Jazz Bassです。
写真左側が元の状態。
ヘッドと指板の色が違いますが、
これは塗料の違いによる焼け具合の差で、
この年代のメイプル指板ベース(ギターも)の特徴です。
70年代はフェンダーが最も量産化に傾倒した年代で、
その作りはお世辞にも素晴らしいとは言えませんが、
仕様が他の年代と異なることもあり、
今ではコアな人気があります。
このネックで言えば、指板サイドに巻かれたセルバインディングと、
ブロックポジションマークが特徴的でしょうか。
ボディのピックアップ位置なんかも、
60'sとは少し違います。
作業の初めは元のフレットを抜くことですが、
最初からすんなり行かせてはくれませんでした。
メイプル指板の楽器の多くは、
フレットを装着した後で指板に塗装が施されています。
このベースはその指板の塗装が分厚くて、
特にフレットのボディ側はほぼ塗料に埋まっているような状態。
きっとヘッドが下側になるようにセッティングされた状態で、
たっぷり塗料を吹き付けられていたのでしょう。
そこでフレットを抜く前に、
その厚い塗料をノミ等で剥がしてから
フレットを抜く作業となりました。
古いベースですので、
年代相応のネックのねじれ、波打ち、ハイ起きがありましたので、
それらを丁寧に修正します。
指板面の塗料は一旦全て剥がします。
ブロックポジションはおそらくセルロイドなのですが、
ほとんどが縮んで隙間がある状態で、
そのままでは綺麗に塗装が乗りませんので、
隙間にも樹脂を充填し、
綺麗な指板面を整形。
その後指板面の汚れ防止の為に、
塗料を薄く塗りつけます。
そしたら新しいフレットを装着。
ご依頼主のご指定で、
ステンレスフレットに変更しました。
メイプル指板のフレット交換は塗装がある分工賃もかさみますので、
長持ちするステンレスフレットは良い選択だと思います。
その後下地の塗料を乗せ、
指板面を焼けた色味で着色しました。
ヘッドの色が濃いのでついついそちらに合わせそうになりますが、
指板はグリップやヘッドサイドと同じ色味に揃えます。
良い感じ。
このベースは指板の角の面取りが必要以上に大きく、
もとの塗装部分との塗り分けはなかなか苦労しました。
使用感があるベースは工賃を抑えるために、
この後薄くクリアを吹いて終わりにすることもありますが、
今回のご依頼は
「指板面もピカピカにしてください!」とのこと。
クリアをある程度重ね、
乾燥後水研、バフがけと、
グロス仕上げを行いました。
ヘッドとはだいぶギャップがありますが、
それもまた素敵です。
フレット自体のサイズは元のものと同じ位の物を使っているのですが、
塗装は大分薄くしあげておりますので、
フレットの山は大きくなったような気がします。
そしたら新しいナットを作り、
弦を張って調整します。
この年代のものは、
ネックのトラスロッド不良などトラブルが多く、
このベースもお預かりした時にはトラスロッドがいっぱいの状態。
今回の作業を経てそこも改善しています。
仕上がりはご覧の通りで、
指板からグリップ側への塗装のつながり具合等、丁寧に仕上げましたので
一見フレット交換がされているとは分からないと思います。
でもフレットはステンレス、
エッジの仕上げも70's量産楽器ではなかなかお目にかかれないであろう、
極上な仕上げを施させていただきました。
全体を見ると歴史を感じる仕様感たっぷりの状態。
でも指板やフレット周りはメンテナンスが行き届いた、
ピカピカベストコンディション。
私が思う、一番カッコいい楽器の状態です。