今年の9月は本当に雨が多く、
ギターや材木を扱う仕事にとってはなかなかキツイシーズンでした。
皆様のギターも多かれ少なかれネックが動いたりしたのではないでしょうか?
そんな雨季も1段落したようなので、
いよいよ木工の秋、リペアの秋の到来。
お待たせしている案件をどんどん進めていきたいと思います。
今日はそんな9月にコツコツと治していた
Gibson Les Paulのネック折れリペアの様子をご紹介。
「また?」と思われた皆さん、
今回は一味違いますよ。
ご依頼いただくことの少ない、
「木目書きタッチアップ」という仕上げを行いました。
まずは患部の強度確保から。
お預かりした時の状態を撮り忘れましたが、
折れた部分を接着。
今回はとても綺麗な断面でしたが、
折れた角度があまりよろしくなく、
シッカリとした補強を入れさせていただくことになりました。
患部周辺を一旦えぐり、形状をピッタリ合わせた当て木を接着しています。
言うまでもなくここまでの工程が最も重要で、
何度もやり直しの効く作業ではありませんので、
手掛ける技術者の責任は重大です。
強度確保だけが目的であれば、
この後簡易的な塗装を施しご返却となりますが、
今回はこの補強部分が見えないよう塗装を施します。
補強部分にしっかりとした下地塗装を施した後、
ご覧のようなカラーで患部を隠ぺいします。
ネック折れ修理のご依頼で多いのが、
この後シースルー塗料で周辺と色味を整えるパターン。
患部周辺のみ木目が見えなくなるような仕上げ方法ですね。
ただ今回は、さらに手の込んだ仕上げを実施しました。
おお、なんだか木目がだんだん浮かび上がってきてます。
マジックでも錬金術でもなく、
すごーくアナログな作業「木目書き」です。
と言っても、ただ木目を書いていく作業では無くて、
木目のような模様も描き込みながら、
周囲の本物の木目との違和感を少なくしていく作業です。
同じマホガニーネック、チェリーレッドでも個体差はすさまじく、
毎回そのネックに合わせた表現の仕方を模索していきます。
Gibsonレスポールで厄介なのが、
ヘッドの両端に「耳」と呼ばれる、木材の貼り合わせ部分があること。
ここは色味も木目の方向も異なりますので、
ネック中央部分とは別で書いていく必要があります。
こうして97パーセント程描き切ったのがこちら!
97パーセントと言ったのは、
この後クリアを重ねていくとまた見え方が少し変わりますので、
そこで足りない木目や色味を加えています。
書き終えた後の机の上は、
ギターリペアをしたとは思えない状態。
他にもエアブラシやスプレーガンを使って書いています。
後片付けが大変そう!と思われるかもしれませんが、
これそのまま保管します。
もちろんカピカピに乾きますが、
これらラッカー塗料ですので、
また使う時にはラッカーシンナーで溶けば使えます。
その後クリアを重ね、
水研、バフがけと進み、
組み上げたのがこちら!
いかがでしょうか?
耳の部分まで色味も違和感無く仕上げられました。
ただ近くで見ると、
やはり木の部分とは質感が異なります。
色は似ても、
木材独特の照りや光の反射はなかなか真似できません。
この修理をする度に
もっと上手くなりたいなぁと思います。