このところSNS等では作業の様子をご紹介していましたが、
新作セミオーダーベースが完成いたしました。
当工房のセミオーダーモデルUnity Bassをベースに、
ご依頼主のご要望を大胆に取り入れた作品です。
その全貌はまた後日ご紹介するとして、
今日は製作作業の様子をサラッとご紹介します。
こちらが完成したばかりのベース。
ボディのダークなイエローと、
爽やかな指板のカラーのコントラストがとても素敵です。
ボディの木工作業はそれほど特殊なものでは無いのですが、
今回最大の難関はその素材。
ポピュラーなボディ材の中では加工難易度が非常に高い、
ホワイトアッシュです。
アッシュは非常に個体差の大きい材ですが、
今回はその中でも特に重たい個体をチョイスしました。
重たい木=詰まって硬い木ですから、
加工は大変です。
例えば、
重たく硬いギター用材としては
ハードメイプルなんかが有名ですが、
メイプルは木材密度が比較的均一なのに対し、
アッシュはその木目により硬さが全然違います。
上の写真で言うと、
白い部分は木目が詰まって硬い部分。
茶色い部分は木の導管」が集まっていて、結構スカスカ。
つまり柔らかい部分です。
この硬さのムラを無視して加工するとどうなるかというと、
固いとこは削れ残り、柔らかいところはどんどん削れ、
ヤスリをかければかけるほどボコボコになる、
そんな厄介な材です。
じゃあどうするかというと、
刃物を万全に仕立て、
木目に負けないよう美しく切削し、
ヤスリがけは最小限にとどめること。
つまり、木工作業の基本をとにかく忠実にこなすことが求められます。
その準備さえ出来ていれば、
油分が少ないアッシュの切削性はむしろ良好で、
こちらの木工スキルをフルに発揮できる材と言えるかもしれません。
で、加工を終えたボディは丁度3kg。
これだけでもう軽めのテレキャスター位ありますね・・・。
アッシュが面白いのはさらにここから。
塗装の最初の工程は導管を埋める作業。
「フィラー」というケミカルな泥みたいなやつを刷り込んでいくのですが、
このフィラーにはいろんな色があります。
木目が透けて見える塗装にする場合は、
このフィラーの色によって全体の雰囲気が激変。
今回ご依頼主は最もアグレッシブに木目を目立たせる「黒」をチョイスしました。
この後、
下地塗装 → 研磨 → 着色 → トップコート → 研磨 → つや消しフィニッシュ
で、塗装は完了です。
この黒いフィラーのおかげで、
シースルーに着色した黄色が決して派手には見えないんです。
(阪〇タ〇〇ースみたいに見えるのはナイショです)
そんな王道材のボディに比べ、
ネックはもしかしたら「世界初」じゃあないでしょうか。
この一見おいしそうな色のついたネック、
どのようにできているかと言いますと・・・
用意したのは5本の木。
実は全部ハードメイプルです。
白い方は普通のハードメイプル、
茶色いのはそれを熱処理した「サーモウッド」ですね。
それらを交互に接着し、
5ピースのメイプルネック材を製作。
ここからネックを削りだしていきました。
指板もメイプルですので、
これだけ色とりどりながらも全てハードメイプルなネック材。
5ピースを貼り合わせたネックは強度に優れ、
大部分を占めるサーモウッドのおかげで、
「ネック鳴り」も期待できます。
この構成に決まったいきさつはほとんど「ノリ」でしたが、
後々考えてみると、
ネック材としては理にかなった構成なのではないかと思います。
こういった多ピースネックはギターではあまり好まれませんので、
ベースならではのチャレンジですね。