今年も欧州サッカーシーズンがほぼ終わってしまいました。
あとは各国カップ戦決勝と、
あとなんだっけ・・・
あ、CL決勝ですね(興味が無い)。
毎年ここからしばらくは寝不足も解消され、
より仕事に集中できるのですが、
今年は残念ながら、私の大好きなEUROがあります。
願望でしかない優勝予想は、
◎イングランド
〇ベルギー
△オーストリア
開催国フランスとの時差は7時間。
試合は現地21時キックオフが多いようです。
えーとその時間日本は・・・・。
仕事に悪影響にならないよう、
超早寝、超早起きを心掛けます。
1人サマータイム。
さて、
このところご依頼が多いネック折れリペア。
これまでブログでも何度がご紹介しておりますが、
今回はあまりやらない仕上げ方をご紹介。
工賃は比較的割安ですが、
作業難易度はとても高い、
そんな職人泣かせのリペアです。
GibsonのES335。
3ピースのマホガニーネック期のもの、
製造からは40年以上経っています。
ネック折れ等のトラブルを減らすためでしょうか、
ヘッドの付け根部分を山型の「ボリュート」と呼ばれる形状に加工してあるのも、
この年代の特徴です。
ただ今回の様に、折れるときは折れるんですけどね・・・。
写真左は折れたものを接着した写真。
ボリュートよりグリップ側に割れ目があります。
比較的綺麗な割れ目でしたが、
折れてから1年程経過していたこと等から、
補強入れが必要と判断。
補強を入れる部分を研削したのが写真中央。
トラスロッドが深めに入っており、
補強の強度を確保するためにはトラスロッドギリギリまで削り込む必要がありました。
トラスロッドが見える所まで削る作業は、
変な汗が噴き出ます。
この後はいつも通り、
補強面ピッタリのカーブの当て木を
ホンジュラスマホガニーで製作し、
がっちりと接着。
ここまで十分な作業が出来ると、
こちらとしては一安心です。
接着剤が十分乾燥したら、
補強材の成型に移ります。
画像左側は、
補強材を大まかな形に成形したところ。
ここからは刃物を用いた木工加工。
刃物を研ぎ直して、
万全の準備で臨みます。
成型が完了したら、
紙やすりで整えたのがこちら。
ボリュートのラインも綺麗につながり、
思い通りの木工加工が出来ました。
折れる前よりさらに強度を稼ぐために、
違和感が無い範囲で厚めに成形しています。
で、最初の話に戻ります。
この普通に見えるネック折れリペアの
どこが難易度が高いかと言いますと・・・・
一般的にネック折れ修理、
この段階ではこんな感じになるはずです。
これはボリュートこそありませんが、
以前手掛けた、同じ工程の写真。
補強材を成型し、元のネックに合わせて整えると、
当然なんですが周囲にヤスリの傷が入ります。
これは失敗して傷が入っているわけでは無く、
むしろ周囲の形状に合わせるためには
周囲と一緒に研磨しなければなりません。
補強有りのネック折れ修理の場合、
ほとんどがこの後塗装をしますので、
この傷も塗装により消えてしまいます。
ところが今回のご依頼は、
「塗装は最低限」というものでした。
そのメリットは
・短納期になること
・塗装分の工賃が割安になること
にあります。
ただ作業を行うこちらとしては、
むしろ絶対に周囲に傷を入れなられない分、
ここまでの作業難易度は格段に上がります。
なかなかスリリングでしたが、
上手く加工が完了しました。
この後は私に一任されましたので、
こんな感じに仕上げてみました。
木の色そのままでは目立ちすぎるので、
周囲の色味に合わせ補強材を染色。
その後目止めの塗料を薄く塗りつけました。
木材には最低限の保護がされている状態です。
周囲とは光の反射や質感も違うので、
全く違和感が無いとは言えませんが、
このままでも使用上は問題がありません。
もし今後オーナー様が
「やっぱり塗装したい」となっても、
この状態であれば再研磨して塗装が出来ます。
修理屋としては、
やはりしっかりとした塗装を乗せさせていただきたいところですが、
ご依頼主のご希望の範囲で、
最大限の効果を得るよう工夫することも大切です。
そういった意味でも、
良い経験を積ませていただきました。
こうしてギターとして復活した73年製ES335。
全体的にチェリーレッドが退色し、
とても良い雰囲気です。
ブランコテイルピースの影響もあるのでしょうか。
サウンドもとても素敵。
また沢山弾いてもらえると良いですね。