今日はまぁマニアックです。
多分ギターに興味が無い方が見たら、
「一緒じゃん!」ってカスタマイズ。
でもそこにはご依頼主の
並々ならぬコダワリが満載で、
私もそれに全力でお応えさせていただいた次第でございます。
そんなギターが
はるばる東京より工房に到着した時は
こんな状態。
ブランドロゴは見当たらず、
出所も伺っておりませんが、
多分作りから推測するに、
国内有名工房さんのカスタムオーダーギター。
元になっているのは今では世界一高価なエレキギターとして有名な
1959年製フライングVですね。
実物は100本未満しか存在していないそうで、
オリジナルものは都内のいいところにマンション買えそうなお値段がします。
私実は、そのオリジナルを弾かせてもらったことがあります。
さすがに持つだけでも怖すぎて、あんまり覚えてませんが。
今回のご依頼内容をすごーく簡単に言ってしまうと、
「このギターをもっと本物っぽくしてほしい」
ということなんです。
お預かりしたギターは何か欠陥があるわけでもなく、
むしろとても良い作り。
そんなものに大がかりな施工をするのは
戸惑いもありましたが、
ご依頼主の並々ならぬ意気込みに触れ、
承ることとなりました。
元のこのギターは、
多分オールド感を出すためでしょう、
いわゆる「極薄塗装」で仕上げられておりました。
木材の導管の凹凸まではっきりと残っている
カッコいい仕上げです。
ところがご依頼主、
まずはここに手を付けろとおっしゃる。
で、こうなりました。
そのいい感じの塗装を全て剥がしまして、
完全に木の状態に戻します。
このギターに使われている「コリーナ」という木、
こんなさわやかな黄色をしています。
ご依頼内容は
・ニトロセルロースラッカーによる全リフィニッシュ
・本物の59のような焼け色の再現
・オリジナルと同様のグロス仕上げ
現代のギターのほとんどの塗料は
ポリウレタンかポリエステル。
あえて「ラッカー」を使う場合も、
より扱いやすい「アクリルラッカー」を使うことが多いです。
ご指定のニトロセルロースラッカーは前時代の塗料で、
今ではあえて使う場面というのはあまりありません。
私も普段使いの塗料ではありませんので、
その感覚に苦労しながらも、
丁寧に仕上げました。
どんな塗料にも経年変化がありますが、
このニトロセルロースラッカーは古い成分の塗料だけに、
その経年変化具合も大きいです。
これから年月を重ねると、
さらなる焼けやクラッキングが発生。
塗装に関してはエイジド加工は施しておりませんので、
ご依頼主が今後育てていかれる部分ですね。
私もいずれ再会できる良いのですが。
ピックガードも作り変え。
ほとんど同じに見えますよね。
元は左側、3プライと呼ばれる、白黒白3層のピックガード。
作り変えたのが右側、白黒白黒の4プライ構造です。
もちろんこれも、オリジナル59と同じ仕様にするため。
実はこの作業、私一度お見積り時にお断りました。
なぜならこの4プライピックガード材の流通が無いから。
ところがその後ご依頼主、
この4プライ材が販売されているものを見つけ、
わざわざ送って下さったのです。
これが流通していたことも、
そして見つけ出したご依頼主の根性にもビックリ。
実際の加工では、
ただ同じ形に削りだすのではなく、
元は甘かった精度を見直し、
元型を起こしなおしてからの再製作。
ごらんの通り、各パーツと寸分の隙間もない精度を実現しています。
そう、
このギターに搭載するためでした!
それらを組込み、
作業を終えがギターがこちらです!
比較のために、元のギターも載せてみました。
それが左上です。
その他は私の作業後。
どうでしょうか?
作業が及んだ部分は外観に関わるほぼ全体。
全体的に深みや渋みが加わり、
私には、元の物には無い
「威厳」とか「オーラ」みたいなものが見えます!
気のせい?
今回のご依頼に際して、
ギターと一緒に資料まで同梱いただき、
私はひたすらそれとにらめっこしながら
楽しく作業させていただきました。
ご依頼主にも大変およろこび頂き、
私も満足度の高い仕事となりました。
オーナー様、
次はハカランダ指板への交換のご依頼、
お待ちしておりますm(_ _)m