工房セミオーダーモデルを出荷し、
島村楽器さんにご紹介いただいた結果か、
ウェブサイトアクセスがここ2日急増し、
うれしい限りです。
ところが良く考えたら、
肝心のギター紹介ページがまだ完成してませんでした!
コンテンツ作成を急ぎますので、
こちらもお楽しみに!
さて今日は、
先月からお預かりしていた、
大がかりなアコギ修理のレポートです。
工房に運び込まれたときは、
こんな状態でした。
ブリッジ付近からボディエンドに向けて、
20cm以上のサウンドボード割れが2か所。
そしてさらには、
ボディ内部のブレイシング(補強用の木)が3本完全に剥がれ落ちてます。
そのうち1本は、最も重要なXブレイシングの片割れ。
どうやらギターに大きな力が加わってしまったようですね。
まずはサウンドホールから鏡を入れ、
中の状態を目視。
さらにはヘラ等を使い、
鏡越しに、残りのブレイシングの状態を確認します。
アコギの修理はこのように、
内部にアクセスするためには
何をするにもサウンドホールを通すしかなく、
とくにトップ材裏は
常に鏡を見ながらの作業。
もう上下左右の感覚がさっぱりになります。
丹念に探ってみると
やはり割れ近くのブレイシングに
接着剥がれが起こっています。
こういった大きなトラブルが起こったギターには、
小さなトラブルも併発していることが多く、
それらを見逃してしまうと、完全なリペアは出来ません。
そうして修繕すべき個所を全て割り出したのち、
まずはサウンドボード割れの接着からスタートです。
今回のトップ材割れは
木材自体の変形によるものでは無く、
一時的な力によるものですので、
その割れはとてもタイトで、隙間がありません。
この状態では接着剤が入れられませんので、
怖い作業ではありますが、
一時的に割れを広げ、接着剤を流し込みます。
写真中央のように、割れ付近をジャッキアップしながら
作業を行いました。
接着剤を塗り込んだ後の
固定の作業が右側。
薄い木材だらけですので、
力任せに固定はできません。
当て板等で元の形状が変化しないよう気を付けながら、
割れ部分に力を加えます。
このまま2日乾燥。
ここからは、
怒涛のブレイシング接着です。
最初は、接着浮き部分の再接着。
ジャッキアップして接着しますので、
底に鏡を敷けません。
磁石を使ってトップ材に固定です。
ジャッキアップするとトップ材は膨らむ方向に動きますので、
外側からも当て板を。
あとは完全に剥がれ落ちたブレイシングを接着していきます。
写真中央が、もっとも強度が必要な
Xブレイシングの接着。
サウンドホールから
7本もクランプを入れる作業となりました。
止める順番を間違えと入らなくなります。
こうして1週間程かけて
すべての接着作業を行いました。
割れ部分はパッチによる補強を入れることもありますが、
今回は縮み等による割れではないことや、
ブレイシングをしっかり再接着できたことから、
余計な補強は入れないこととしました。
弦を張り1週間ほど様子を見て、
無事リペア完了。
90年代製のこのギター、
このリペアを経て、
さらに良い音楽を奏で続けてほしいものです。