工房開設から
今日で丁度半年。
おかげさまで大変充実した日々を
過ごさせていただいています。
今はまだ任せていただいた仕事を
こなしていくのに精一杯な毎日ですが、
少しずつ目指すところも見えてきて、
これからがとても楽しみです。
2014年も残り2か月。
ブログも出来るだけさぼらないよう
頑張ります。
皆様ネタを、ネタをご提供ください!
さぁそんな中、
今日ご紹介するのは
ここであらためて説明するまでもない名機
MartinのD28。
リペアでお預かりしているのですが、
すでに私のところに来たのは2回目。
今回はこんな状態でのご来訪です。
悲劇です。
ケースごと倒れた衝撃で、
割れてしまったそうです。
アコギやギブソンタイプの様に、
ネックとヘッドに角度が付いているタイプのギターでは
良くあるトラブルで、
リペアのご依頼も少なくありません。
リペアの方法は基本的に、
まず割れの接着。
接着だけで十分な強度が得られる場合もあれば、
割れ方や割れの方向が悪いと、
補強を入れて強度を稼ぐ必要があります。
尚且つ、
割れてから時間が経ってしまうと、
割れ面それぞれが変形してしまい、
綺麗に着かなくなることもあり、
接着は出来るだけ早く行う必要があります。
今回のお客様は
割れてしまってからすぐにご連絡を頂いたため、
スピーディに対処することが出来ました。
ただ接着と言っても、
ご覧の様に複雑な作業です。
クランプを用いて圧着するのですが、
折れ方、割れ方は毎回異なりますので、
都度固定方法を検討し、
必要に応じて治具や当て板を作成、
さらに「仮止め」と呼ばれるシミュレーションを何度も行い、
万全の準備を整えての接着作業です。
無事接着作業が終わったら1日以上そのまま乾燥。
今回は割れ面もとても綺麗で、
接着のみで十分な強度が稼げると判断し、
弦を張った状態で1週間程観察、
無事リペア完了となりました。
これは不幸中の幸いなパターン。
一方、リペアマンにとってあまり喜ばしくないのが
こんなパターンです。
これは昨年手がけた個体。
ご覧の通り、
ヘッドが完全に分離してしまったパターン。
しかも良く見るとそこには、
瞬間接着剤の痕が!
これはいけません。
気持ちは分かります。
ただ、ネック折れの接着作業は
リペアマンでも緊張する作業。
設備も乏しいご家庭の環境では大分厳しいものがあります。
基本的には何もせず、
リペアショップにお任せください。
特に、瞬間接着剤や汎用のゴム系接着剤を使用してしまうと、
木工用の接着剤が効かなくなるため、
再接着が極めて難しくなります。
上写真の場合は、
可能な限り瞬間接着剤を取り除き、
大がかりな接着作業を行う必要がありましたが、
補強も入れることで、
何とか強度を確保できました。
でも判断としてはぎりぎりで、
断ろうとも思ったパターンでした。
気を取り直して、
今回のマーチンです。
作業完了後全体を良く見てみると、
スゴイ数のリペア痕があります。
指板下に割れ痕がもう一か所、
ボディサイドにも割れ痕があって、
内部にサイドブレスが追加されています。
ネックも、リセットされた痕が!
1970年代製のこの個体、
数々の苦難を乗り越えてきているようです。
そのたびにしっかりと直され
今日に至っている様子です。
これだけ愛されているこのギター、
演奏性やサウンドは超一級品。
こんなに弾きやすく、且つ広いレンジでしっかりなるMartinは
そうそうありません。
全体を眺めると、
ラッカー塗装は細かいウェザーチェックが入り、
ものすごい貫禄が漂っています。
ギターって良いですね!