今日は古き良き国産ギター、Ibanez LR10のリペア風景をご紹介。
1980年製のセミアコです。
ご依頼内容は、
フレット交換とともに、指板を綺麗にしてほしいというものでした。
ご依頼主自らフレットすり合わせを何度もされていて
フレット自体がとても低く、
さらにはその作業により、指板に目立つ傷が多数入ってしまっています。
(ただし、すり合わせ作業自体はとてもアマチュアとは思えないほど
きっちりと山出しされた素晴らしいものでした)
お話を伺いながらその指板を眺めていると、
汚れと傷の奥に、なんだか神秘的な木目が・・・。
ん?
ブラジリアンローズウッド!?
先日のブログでも紹介させていただきましたが、
現在はワシントン条約により、国際的な商取引は禁止されているこの木材、
当時普通に使われていたのですね。
というわけで、
ステンレスフレットへの交換という本来の目的に加え、
ブラジリアンローズ本来の美しさを復活させるという
リペアマン冥利に尽きるご依頼となりました。
まずはフレットを抜き、傷や欠けの補修をしていきます。
もちろん外見的部分だけではなく、
フレットをしっかり保持するために、溝の修正も行います。
30年以上たっている指板は痩せも大きく、
全体的に溝がゆるくなる傾向にあります。
そうして磨き上げたのが一番右の写真。
なんということでしょう!
想像以上の杢が隠れていました。
このあたりの作業、
終始1人でニヤニヤしていたのは
間違いありません。
・・・気を取り直して、
フレットの準備をしてフレット打ち
(ところがハカランダに見とれ写真撮り忘れ)
フレットを指板幅にそろえたのが
下の左側写真です。
フレットは金属ですから、
ただ削り揃えただけの断面は
まるで刃物の様な鋭利さです。
ここからが職人としての腕の見せ所ですが、
最終的に写真右のように、
フレットのエッジを全て面取りします。
もちろん1本1本手作業で行います。
ここの形状はメーカーや職人さんにより様々ですし、
書きたいことは山ほどありますが、
またいずれ触れたいと思います。
私は常に、必要最低限な面取りで済ませるよう心掛けています。
フレット交換を行うと
元よりフレット高が高くなるため、
基本的にはナット交換も併せて行います。
弦張りをし、新しいフレットに合わせ全体を調整して完了です。
ブラジリアンローズウッドのおかげか、
非常にスムーズな作業となりました。
数日様子を見て、
ご依頼主の元に帰ります。
喜んでいただけると良いのですが。