人間誰しも、
楽しいことは早くやりたくなるものですが、
ギター作りにおいては、
着色工程がそれに当たります。
それまで頭でイメージしていたものが
ようやく実物になって目の前に現れますので、
楽しいに決まってます。
ただその前に、
色を付ける作業よりも、もっと重要な作業が待ってます。
焦ってここを雑にやると、
後々大きく後悔します。
ところがこの作業、全然面白くありません。
しっかり乾燥させたサンディングシーラーを研磨し、
着色前の下地塗膜を作ります。
これほど盛大な研磨作業はこれで最後ですので、
つまりはこのサンディング研磨時の形状が、
塗装の仕上がりの美しさに大きく影響します。
研磨しながら、全体の面の具合や、細かい凹凸をチェック。
傷の大きさや傷の方向まで整えなければなりません。
経験上、
「よし終わった!」
はまだ9割程度の出来なので、
一旦落ち着いて再チェック。
のこり1割を見落とさないよう頑張ります。
さぁ、いよいよ着色。
今回はこの手のギターにとって
定番中の定番カラー
3カラーのサンバーストです。
順番はもうどこから吹いても良いのですが、
私はまず外側の縁取りを。
真っ黒に見えますが、塗料自体は濃いこげ茶を吹き付けています。
続いて内側の黄色っぽい色。
写真では随分暗く見えますが、いわゆる薄い飴色、アンバーカラーです。
ギターではとても良く使う色で、
いつも調色するのも面倒なので、
Y.O.S.では4色を混ぜ合わせたものを作り溜めています。
このまま終わると、50年代風の2カラーバーストですが、
今回は60年風3カラーですので、黒とアンバーの間に、赤を入れました。
全体的に大分ダークに見えますが、
実はそこがポイントです。
この時点では塗装表面はやすりの傷で凹凸があるので、
艶が無いマットな状態になっています。
この後クリアを乗せると、光が木材まで通り、
そこからの反射や塗膜の中での光の屈折が起こり、
色味が変化します。
これはもう、経験としか言いようがありません。
さぁ、クリアを乗せてみましょう。
左は着色後、薄くクリアを吹き、色味の確認をした状態。
右はクリアを十分な量重ねた状態。
着色直後とは大分印象が変わりますね。
このカラーリング、
エレキギター界ではあまりにスタンダードな塗装の1つですが、
美しく仕上げるのはとても難しいカラーです。
あまり注目しない部分かもしれませんが、
いろいろなメーカーのこのカラー、
見比べてみると面白いですよ。
この後は次の工程まで、
またしっかりと乾燥させます。